投資の世界には様々な金融商品が存在します。
中でも、少ない資金で大きな取引ができる可能性があるCFD(差金決済取引)や先物取引に興味を持つ方も多いでしょう。
これらは株価指数や商品など多様な資産に投資できる点で共通していますが、その仕組みやリスク、必要な資金には大きな違いがあります。
この記事では、特に投資初心者の方に向けて、「CFDと先物取引の違い」を基本的な仕組みからコスト、リスク管理、税金、取引時間、必要資金といった様々な角度から徹底比較します。
それぞれのメリット・デメリットを正しく理解することは、ご自身の投資スタイルや資金状況に合った方法を選ぶ上で非常に重要です。
CFDと先物取引、どちらが自分に適しているのか。
この記事を通じて、その疑問を解消し、賢い投資判断を下すための一助となれば幸いです。
本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の手法や知識を推奨したり、売買を勧めたりするものではありません。
本記事に記載されている情報については、正確性、完全性、有用性を確保するために努力しておりますが、その保証は致しかねます。
投資対象や商品の選択など、実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。
必要に応じて、財務アドバイザーや税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
本記事の情報を利用した結果として発生するいかなる損害についても、著者は一切の責任を負いません。
1. CFDと先物取引の基本的な違い
まず、CFDと先物取引がどのようなもので、根本的に何が違うのかを見ていきましょう。
1.1 決済期限の有無
最大の違いの一つが、決済期限の有無です。
(1) CFD:決済期限なし。ポジションを自由に保有可能。
CFDには、原則として決済しなければならない期限がありません。
これは、一度購入または売却したポジション(建玉)を、トレーダー自身の判断で好きな期間だけ保有し続けられることを意味します。
数分で決済する短期売買から、数週間、数ヶ月、あるいは年単位での長期保有まで、戦略に応じて自由に期間を選べます。
これは現物株式の保有感覚に近いかもしれません。
この期限がない点は、CFDの大きな特徴であり、柔軟な取引を可能にする要因となります。
(2) 先物取引:決済期限(限月)があり、期限到来時に自動決済される。
一方、先物取引には必ず「限月(げんげつ)」と呼ばれる決済期限が定められています。
これは、その先物契約が満期を迎える月のことです。
限月が到来すると、そのポジションは最終的な決済価格で自動的に決済されます。
もし期限を越えてポジションを持ち続けたい場合は、「ロールオーバー」という手続きが必要になります。
これは、期限が近い契約(期近)を決済し、同時に期限が遠い契約(期先)を新たに建てる取引で、通常は追加の取引コストが発生します。
このように、先物取引では常に決済期限を意識した取引計画が求められます。
この決済期限の有無は、取引戦略の立て方に根本的な影響を与えます。
CFDは期限に縛られず自由なタイミングで決済できますが、先物取引は限月という時間的制約の中で判断を下す必要があります。
1.2 取引の仕組みと市場
取引がどこで、誰と行われるかという点も異なります。
(1) CFD:店頭取引が主流で、証券会社が相手方となる。
CFD取引の多くは「店頭取引(OTC: Over-The-Counter)」という形態で行われます。
これは、投資家が証券取引所のような公的な市場を介さず、直接、取引を提供する証券会社やFX会社(以下、業者と呼びます)を相手方として取引する方式です。
業者が提示する価格で売買が成立します。
このため、価格の透明性や公正性は業者の信頼性に依存する側面があります。
一方で、業者が独自に多様な商品を提供しやすいというメリットもあります。
(2) 先物取引:取引所取引で、取引所が取引の場を提供する。
先物取引は、大阪取引所(OSE)や東京商品取引所(TOCOM)といった公的な「取引所」を通じて行われます。
取引所は、多数の買い手と売り手が集まる市場を提供し、公正な価格形成と円滑な取引執行を担います。投資家は証券会社を通じて取引所に注文を出し、他の市場参加者と売買を行います。
取引所が契約の履行を保証する仕組み(清算機関)があるため、取引相手の信用リスク(カウンターパーティリスク)は相対的に低いとされます。
契約内容も取引所によって標準化されています。
店頭取引(CFD)と取引所取引(先物取引)の違いは、価格決定の仕組み、取引の透明性、カウンターパーティリスク、商品の標準化といった点で差を生みます。
CFDでは業者との相対取引である一方、先物取引は市場参加者全体での取引となります。
1.3 取引対象の多様性
取引できる商品の種類にも違いがあります。
(1) CFD:株価指数、商品、個別株、ETFなど多岐にわたる。
CFDの大きな魅力の一つは、取引対象となる資産(原資産)の種類の豊富さです。
日経平均株価や米国のS&P500といった国内外の主要な「株価指数」、原油や金などの「商品(コモディティ)」、日本株だけでなく米国株などの「個別株式」、さらには「ETF(上場投資信託)」、業者によっては債券や暗号資産(仮想通貨)に関連するCFDまで提供されています。
一つの口座で世界中の様々な市場にアクセスできる利便性は、CFDの大きなメリットと言えるでしょう。
(2) 先物取引:主に株価指数や商品が中心。
先物取引も株価指数(例:日経225先物、TOPIX先物)や商品(例:金先物、原油先物、とうもろこし先物)など、経済の根幹をなす重要な資産を取引できます。
しかし、CFDと比較すると、特に個人投資家がアクセスしやすい範囲では、取引対象の種類は限定的になる傾向があります。
個別株式の先物も存在しますが、株価指数先物や商品先物ほど一般的に取引されているわけではありません。
多様な資産に手軽に投資したい初心者にとっては、CFDのほうが選択肢が多く、始めやすいと感じるかもしれません。
2. コストと手数料の比較
投資を行う上で無視できないのがコストです。CFDと先物取引では、コスト構造が異なります。
2.1 取引手数料とスプレッド
売買時に直接かかるコストを見てみましょう。
(1) CFD:取引手数料は基本無料だが、スプレッド(売値と買値の差)がコストとなる。
多くのCFD業者は「取引手数料無料」を謳っています。
しかし、これはコストが全くかからないという意味ではありません。
CFDの主な取引コストは「スプレッド」と呼ばれるものです。
スプレッドとは、同一時点における売値(Bid)と買値(Ask)の価格差のことを指します。
例えば、あるCFDの売値が100円、買値が101円の場合、スプレッドは1円です。
投資家は買うときは高い方の価格(買値)、売るときは安い方の価格(売値)で取引するため、ポジションを建ててすぐに決済すると、このスプレッド分の損失が発生します。
これが実質的な取引コストとなります。スプレッドの幅は、業者や市場の状況によって変動します。
(2) 先物取引:取引手数料が発生し、証券会社によって異なる。
先物取引では、通常、1枚(コントラクト)売買するごとに「取引手数料」が発生します。
この手数料の金額は、利用する証券会社や取引する銘柄によって異なります。
手数料体系を事前に確認することが重要です。
一方で、取引所での価格形成のため、流動性が高い銘柄であれば、スプレッド(売値と買値の差)はCFDよりも狭い(タイトな)傾向があります。
ただし、取引手数料とスプレッドの両方を考慮して、トータルの取引コストを比較する必要があります。
「手数料無料」という言葉だけで判断せず、CFDではスプレッドが、先物取引では取引手数料が主な直接コストとなることを理解しましょう。
どちらが有利かは、取引する銘柄、取引量、利用する業者によって変わってきます。
2.2 その他のコスト
売買時以外にも発生する可能性のあるコストがあります。
(1) CFD:価格調整額や金利調整額が発生する場合がある。
CFDポジションを翌日に持ち越す(オーバーナイトする)場合、追加のコストが発生することがあります。
主なものに「金利調整額(オーバーナイト金利、ファンディングコストとも呼ばれる)」があります。
これは、レバレッジをかけてポジションを保有することに伴う金利負担(または受取)を調整するものです。
買いポジションなら金利支払い、売りポジションなら金利受け取りとなることが多いですが、金利情勢によっては逆になることもあります。
また、株価指数CFDや個別株CFDでは、配当金に相当する「権利調整額(配当調整額)」が発生します。
買いポジションなら受け取り、売りポジションなら支払いとなるのが一般的です。
これらの調整額は、ポジションを保有している間、基本的に毎日発生するため、長期保有する場合はコストが積み重なる可能性があります。
(2) 先物取引:ロールオーバー時のコストや金利調整は通常発生しない。
先物取引では、ポジションを翌日に持ち越しても、CFDのような日々の金利調整額は原則として発生しません。
金利や配当といった保有コストは、理論上、あらかじめ先物価格自体に織り込まれていると考えられています。
ただし、前述の通り、決済期限(限月)を超えてポジションを保有したい場合は「ロールオーバー」が必要です。
ロールオーバーを行う際には、現在のポジションを決済し、次の限月のポジションを新たに建てるため、それぞれの取引に対して取引手数料がかかります。
これが実質的な持ち越しコストとなります。
ポジションの保有期間によって、どちらのコスト構造が有利になるかが変わってきます。
CFDは日々の調整額が影響するため短期向き、先物取引は日々のコストがない代わりにロールオーバーコストがあるため、限月内の中期保有に向いていると言えるかもしれません。
3. レバレッジとリスク管理
少ない資金で大きな取引ができるレバレッジは、CFDと先物取引の魅力ですが、同時にリスクも伴います。
リスク管理の仕組みにも違いがあります。
3.1 レバレッジの違い
レバレッジとは、「てこ」の原理のように、少ない自己資金(証拠金)で、その何倍もの金額の取引を可能にする仕組みです。
(1) CFD:商品によって異なるが、最大5~20倍程度。
CFDで利用できる最大レバレッジは、取引する原資産の種類によって日本の金融商品取引法で上限が定められています。
一般的に、株価指数CFDは最大10倍、商品CFDは最大20倍、個別株CFDは最大5倍となっています。(※これらの倍率は規制や業者によって変更される可能性がありますので、必ず最新の情報をご確認ください。)
レバレッジが高いほど、少ない資金で大きな利益を狙えますが、逆に損失も大きくなる可能性があることを理解しておく必要があります。
(2) 先物取引:銘柄により異なるが、10~30倍程度が一般的。
先物取引のレバレッジは、CFDのように一律の倍率で決まるわけではありません。
取引所が定める証拠金額(SPAN証拠金など、市場の変動率に応じて計算される)に基づいて、実質的なレバレッジが決まります。
銘柄や市場のボラティリティ(価格変動の大きさ)によって変動しますが、結果的にCFDよりも高いレバレッジ(例えば10倍~30倍程度、あるいはそれ以上)になることも少なくありません。
こちらも同様に、高いレバレッジは高いリスクを伴います。
どちらもレバレッジを利用できますが、その計算方法や上限が異なります。
重要なのは、最大レバレッジまで使うのではなく、自身の許容リスクに合わせて、実効レバレッジ(取引総額 ÷ 自己資金)をコントロールすることです。
3.2 ロスカットと追証
損失が拡大した場合の対応策にも、重要な違いがあります。
(1) CFD:証拠金維持率が一定以下になると自動ロスカットが発動。追証が発生する場合もある。
多くのCFD取引では、「ロスカット」という仕組みが導入されています。
これは、相場の急変動などによって損失が拡大し、口座の有効証拠金(口座残高+評価損益)が必要証拠金を維持するための一定の割合(証拠金維持率、例えば50%や100%など業者により異なる)を下回った場合に、さらなる損失拡大を防ぐために、保有しているポジションの一部または全部が強制的に決済される制度です。
このロスカットルールにより、原則として口座残高がマイナスになる(=借金を負う)リスクを低減するよう設計されています。
ただし、相場が極端に急変動した場合には、ロスカットが間に合わず、預けた証拠金以上の損失が発生し、「追証(おいしょう:追加証拠金の略)」、つまり追加の資金入金を求められる可能性もゼロではありません。
しかし、基本的にはロスカットによる損失限定効果が期待されます。
(2) 先物取引:ロスカット制度はなく、追加証拠金(追証)の請求が行われる。
先物取引には、CFDのような自動ロスカット制度は基本的にありません。
代わりに「追証(追加証拠金)」の制度が中心となります。
ポジションの評価損が拡大し、証拠金が維持証拠金(取引を続けるために最低限必要な証拠金レベル)を下回った場合、証券会社から追証の請求が行われます。
投資家は、指定された期限までに不足分の証拠金を追加で入金しなければなりません。
もし入金できない場合、保有ポジションは強制的に決済されます。
さらに重要な点として、相場の急変動により損失が預託した証拠金の額を超えた場合、その不足分は投資家が支払う義務を負います。
つまり、口座残高がマイナスになり、証券会社に対して借金を負うリスクがCFDよりも明確に存在します。
このリスク管理の違いは、初心者にとって非常に重要です。
CFDのロスカットは、ある程度の損失限定機能として働きますが、先物取引の追証は、証拠金以上の損失、つまり借金のリスクを伴います。
この点を十分に理解し、どちらのリスク特性が自身に合っているかを判断する必要があります。
4. 税制上の取り扱い
CFDと先物取引で得た利益にかかる税金についても確認しておきましょう。
4.1 税区分と課税方法
日本国内でCFD取引や先物取引によって利益(所得)を得た場合、税金の扱いは以下のようになります。
(1) CFD:先物取引に係る雑所得等として申告分離課税(税率20.315%)。
CFD取引による利益は、税法上「先物取引に係る雑所得等」に分類されます。
これは給与所得など他の所得とは合算せず、分離して税額を計算する「申告分離課税」の対象となります。
(2) 先物取引:同様に申告分離課税(税率20.315%)。
先物取引による利益も、CFDと同様に「先物取引に係る雑所得等」として扱われ、「申告分離課税」の対象です。
共通の税率: どちらの取引で得た利益に対しても、適用される税率は同じです。
所得税15%、住民税5%、そして復興特別所得税0.315%(所得税額の2.1%)を合計した、一律20.315%の税率が課されます。
税金の区分や税率に関しては、CFDと先物取引の間に違いはありません。
どちらを選んでも税制面での有利不利はないと言えます。
4.2 損益通算と繰越控除
年間の取引で利益と損失が出た場合の扱いや、損失が出た場合の救済措置も共通しています。
(1) CFD:先物取引間での損益通算や3年間の繰越控除が可能。
(2) 先物取引:同様に損益通算や繰越控除が適用される。
共通のルール:
- 損益通算: CFDと先物取引は同じ「先物取引に係る雑所得等」のカテゴリーに属するため、一年間の取引を通じて、例えばCFDで利益が出て先物取引で損失が出た場合、あるいはその逆の場合でも、それぞれの損益を合算(通算)することができます。これにより、全体の利益を圧縮し、支払う税金を抑えることが可能です。この損益通算は、同じカテゴリーに含まれる他のデリバティブ取引(例:FX、オプション取引など)の損益とも行えます。
- 繰越控除: 年間の損益を通算した結果、最終的に損失が残った場合、その損失額を翌年以降最大3年間にわたって繰り越し、翌年以降の同カテゴリーの利益から控除することができます。これを「損失の繰越控除」といいます。ただし、この繰越控除の適用を受けるためには、損失が出た年にも確定申告を行い、その後も継続して確定申告を行う必要があります。
損益通算と繰越控除のルールが共通しているため、複数のデリバティブ商品を取引している投資家にとっては、全体の損益を管理しやすい税制となっています。
5. 取引時間と柔軟性
取引できる時間帯や、それによって生まれる取引戦略の自由度にも違いがあります。
5.1 取引時間の比較
(1) CFD:平日ほぼ24時間取引が可能。
CFDの大きな利点の一つは、取引時間の長さです。
特に、海外の株価指数(NYダウ、S&P500など)や商品(金、原油など)、為替(FX)を原資産とするCFDは、市場が世界のどこかで開いているため、日本の祝日を除く平日であれば、ほぼ24時間いつでも取引が可能です。
これにより、日中は仕事で忙しい方でも、夜間や早朝に海外市場の動きに合わせて取引したり、重要な経済指標発表のタイミングで取引したりすることができます。
(2) 先物取引:取引所の立会時間に準じるため、取引時間が限定される。
先物取引の取引時間は、その商品が上場されている取引所のルールに従います。
例えば、大阪取引所の日経225先物や日経225miniは、日中立会(例:午前8時45分~午後3時15分)と夜間立会(例:午後4時30分~翌午前6時)があり、比較的長い時間取引できますが、それでも取引ができない時間帯(セッション間のギャップや週末)が存在します。
また、東京証券取引所(東証)に上場されている株式の取引時間は、午前(9:00~11:30)と午後(12:30~15:30)に限られています(2024年5月現在)。
このように、先物取引はCFDに比べて取引時間が限定される傾向があります。
ほぼ24時間動いている市場にいつでもアクセスしたい場合はCFDが、取引所の定める時間内で集中して取引したい場合は先物取引が、それぞれ適していると言えるでしょう。
ただし、CFDの24時間取引は便利な反面、常に市場を気にしてしまう、
流動性の低い時間帯に不利なスプレッドで取引してしまうといったリスクも考慮する必要があります。
5.2 取引の柔軟性
取引時間と決済期限の有無は、取引戦略の柔軟性に影響します。
(1) CFD:決済期限がないため、長期保有や短期売買など柔軟な取引が可能。
CFDは決済期限がなく(1.1参照)、ほぼ24時間取引が可能(5.1参照)であることから、非常に柔軟な取引戦略をとることができます。
数秒から数分で利益を狙うスキャルピング、数時間から数日で決済するデイトレード、数日から数週間保有するスイングトレード、さらには数ヶ月以上にわたる長期保有まで、様々な時間軸での戦略が可能です。
ただし、長期保有の場合は、日々の金利調整額や権利調整額(2.2参照)がコストとして積み重なる点に注意が必要です。
(2) 先物取引:決済期限があるため、取引戦略に制約が生じる場合がある。
先物取引は決済期限(限月)があるため(1.1参照)、取引戦略には時間的な制約が伴います。
限月までの期間内での中期的な価格変動を狙う取引や、特定の期日に合わせたヘッジ(リスク回避)目的の取引などには適しています。
しかし、限月を超えてポジションを保有し続けるためにはロールオーバーが必要となり、その手間とコストがかかります。
また、取引時間が限られているため(5.1参照)、CFDほど自由なタイミングでの短期売買は難しい場合があります。
取引スタイルや目的に合わせて、この柔軟性の違いを考慮することが大切です。
自由度の高さを求めるならCFD、期限を前提とした計画的な取引やヘッジには先物取引、という見方もできます。
6. 取引単位と必要資金
実際に取引を始めるにあたって、どれくらいの資金が必要になるかは、特に初心者にとって重要なポイントです。
6.1 取引単位の違い
一度の取引で最低限売買しなければならない単位が異なります。
(1) CFD:少額から取引可能で、初心者にも始めやすい。
CFDは、取引単位を非常に小さく設定している業者が多いのが特徴です。
例えば、日経平均株価を参照するCFD(日経225 CFD)では、指数価格の0.1倍(0.1枚、などと表現される)といった小さな単位から取引できる場合があります。
仮に日経平均が40,000円の場合、0.1単位の取引価値(想定元本)は400,000円となります。
このように取引単位が小さいため、投資家は自身の資金量に合わせてポジションサイズを細かく調整しやすく、リスク管理を行いやすいというメリットがあります。
(2) 先物取引:取引単位が大きく、必要資金も高額になる傾向がある。
先物取引の取引単位は、取引所によって標準化されており、CFDに比べて大きいのが一般的です。
例えば、個人投資家にも人気のある日経225mini先物の場合、取引単位は指数価格の100倍です。日経平均が40,000円なら、1枚あたりの取引価値(想定元本)は4,000,000円にもなります。
さらに大きな日経225ラージ先物では指数価格の1,000倍(同条件で40,000,000円)です。
このように、最低取引単位あたりの金額が大きいため、少額資金で取引を始めるにはハードルが高くなります。
取引単位の大きさは、リスク管理のしやすさに直結します。
CFDの小さな取引単位は、特に資金が限られている初心者にとって、適切なリスク量で取引を始めることを可能にします。
6.2 必要証拠金の比較
取引を始めるために最低限必要な資金(証拠金)の目安を見てみましょう。
(1) CFD:商品によって異なるが、数千円から取引可能。
CFDは、小さい取引単位(6.1参照)とレバレッジ(3.1参照)の組み合わせにより、比較的少ない証拠金で取引を始めることが可能です。
例えば、前述の日経225 CFD(想定元本400,000円)をレバレッジ10倍(必要証拠金率10%)で取引する場合、最低限必要な証拠金は約40,000円となります。
銘柄や業者によっては、さらに少ない数千円程度の証拠金から取引を始められる場合もあります。
(2) 先物取引:銘柄により異なるが、数十万円以上の証拠金が必要。
先物取引は、取引単位が大きい(6.1参照)ため、必要な証拠金額も高額になる傾向があります。
例えば、日経225mini先物(想定元本4,000,000円)を取引する場合、必要証拠金(SPAN証拠金など)は市場の状況によって変動しますが、一般的に1枚あたり十数万円から数十万円程度(例:15万円~25万円など)が必要となります。
日経225ラージ先物であれば、さらに高額な証拠金が求められます。
この必要証拠金の差は歴然としています。
数万円程度から始められるCFDに対して、先物取引は最低でも数十万円単位の資金が必要となることが多く、これが初心者にとっての参入障壁となる場合があります。
「CFD 先物 違い」の中でも、この資金面のハードルの差は非常に大きいと言えるでしょう。
CFDと先物取引の主な違い一覧
項目 | CFD | 先物取引 |
---|---|---|
決済期限 | 原則なし | あり(限月) |
取引市場 | 店頭取引(OTC)が主流 | 取引所取引 |
主な取引対象 | 多岐にわたる(指数、商品、個別株、ETF等) | 指数、商品が中心 |
取引手数料 | 原則無料(スプレッドが実質コスト) | あり(証券会社・銘柄による) |
実質コスト(短期売買) | スプレッド | 取引手数料 + スプレッド |
保有コスト(オーバーナイト) | 金利・価格調整額(基本的に毎日発生) | 原則なし(ロールオーバー時に取引手数料が発生) |
レバレッジ目安 | 最大5~20倍程度(商品による規制あり) | 10~30倍程度(銘柄・市場状況による) |
リスク管理(損失拡大時) | ロスカット制度(損失限定効果) | 追証制度(証拠金以上の損失リスクあり) |
最大損失リスク | 原則、証拠金まで(例外あり) | 証拠金を超える可能性あり(借金リスク) |
税金 | 申告分離課税(20.315%) | 同じ |
損益通算・繰越控除 | 可能(先物など他の対象商品と) | 同じ |
取引時間 | ほぼ24時間(主要銘柄) | 取引所時間に準拠(日中/夜間など) |
最低取引単位例(日経平均) | 小さい(例: 0.1単位) | 大きい(例: mini 1単位 = 指数x100円) |
必要資金目安(日経平均) | 低い(例: 数万円~) | 高い(例: 数十万円~) |
7. まとめ:CFDと先物取引の選び方
ここまで、CFDと先物取引の様々な違いについて詳しく見てきました。
最後に、それぞれの特徴を踏まえ、どのような場合にどちらが適しているかの目安をまとめます。
7.1 短期取引や少額投資、柔軟な取引を重視する場合はCFDが適している。
以下のような方には、CFDがより適している可能性が高いでしょう。
- 投資初心者の方: 少額の資金から始められ、取引単位も小さいため、リスクを抑えながら実際の取引経験を積みやすいです。ロスカット制度による損失限定効果も、安心材料の一つとなり得ます。
- 多様な資産に投資したい方: 株価指数、商品、個別株、ETFなど、幅広い選択肢の中から投資対象を選びたい場合に便利です。
- 取引時間の自由度を求める方: 平日ほぼ24時間取引できるため、ライフスタイルに合わせて取引時間を確保しやすいです。
- 決済期限に縛られず、柔軟な期間で取引したい方: 短期売買から長期保有(コスト考慮要)まで、自分の戦略に合わせてポジションの保有期間を決めたい場合に有利です。
- 証拠金以上の損失リスク(借金リスク)をできるだけ避けたい方: ロスカット制度があるため、先物取引の追証に比べて、予期せぬ大きな損失を被るリスクは相対的に低いと言えます。
7.2 中長期的な取引や特定のヘッジ目的がある場合は先物取引が適している。
一方で、以下のような場合には、先物取引が選択肢に入ってくるかもしれません。
- 比較的まとまった資金を用意できる方: 取引単位が大きく、必要証拠金も高額になるため、ある程度の資金力が必要です。
- 特定の主要な株価指数や商品に集中して取引したい方: 流動性が高く、取引所取引の透明性を重視する場合に適しています。
- 限月内での中期的な取引を計画している方: 日々の保有コスト(金利調整額など)がかからないため、数週間から数ヶ月程度の保有には有利な場合があります。
- 特定の期日に合わせたヘッジ取引を行いたい方: 決済期限が明確であるため、期限のあるリスクに対するヘッジ手段として利用しやすいです。
- 追証のリスクを理解し、自己管理できる経験豊富なトレーダー: レバレッジ効果をより大きく活用したい、あるいは取引所取引の仕組みを好む場合に検討されます。
最終的な選択
CFDと先物取引は、どちらが絶対的に優れているというものではありません。
「CFD 先物 違い」を正しく理解した上で、ご自身の投資経験、資金量、リスク許容度、投資目的、取引したい商品、好みの取引スタイルなどを総合的に考慮して、最適な方法を選ぶことが重要です。
この記事が、皆様の投資判断の一助となれば幸いです。
まずは少額から始められるCFDで経験を積み、将来的に先物取引も視野に入れる、といったステップアップも考えられるでしょう。
ご自身に合った方法を見つけ、賢い資産運用を目指してください。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
【登場人物】






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