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初心者向け【CFDの損切りとは?】正しいルールと失敗しないコツを解説!

CFD(差金決済取引)は、少ない資金で大きな取引ができるレバレッジ効果により、高いリターンを狙える可能性がある魅力的な金融商品です。

しかし、その反面、大きな損失を被るリスクも常に隣り合わせに存在します。

特に、取引経験の浅い初心者の方にとっては、このリスク管理が非常に重要になります。

多くの初心者がCFD取引で失敗してしまう原因の一つに、「損切り」のルールを正しく理解せず、実行できないことが挙げられます。

損切りをためらったり、間違った方法で行ったりすると、損失はあっという間に膨らみ、大切な資金を失いかねません。

この記事では、CFD取引における「損切り」とは何か、なぜそれが不可欠なのか、そして具体的なルールの設定方法や失敗しないためのコツについて、初心者の方にも分かりやすく、ステップバイステップで解説します。

この記事を読むことで、「CFD 損切り」の基本をしっかりと身につけ、より安全にCFD取引を始めるための一歩を踏み出すことができるでしょう。

適切なリスク管理は、CFD取引で長期的に成功するための鍵となります。

また、リスク管理をサポートしてくれるツールや、信頼できる証券会社を選ぶことも、安心して取引を行う上で助けとなります。

本記事について

本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の手法や知識を推奨したり、売買を勧めたりするものではありません。

本記事に記載されている情報については、正確性、完全性、有用性を確保するために努力しておりますが、その保証は致しかねます。

投資対象や商品の選択など、実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

必要に応じて、財務アドバイザーや税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

本記事の情報を利用した結果として発生するいかなる損害についても、著者は一切の責任を負いません。

目次

1. 差金決済取引(CFD)における損切りの基本

1.1 損切りとは何か?

(1) 損切りの定義と目的

損切り(そんぎり)とは、保有しているポジション(買い建てまたは売り建てしている金融商品)に含み損が発生した場合に、それ以上の損失拡大を防ぐために、自らそのポジションを決済して損失を確定させる行為のことです。

英語では「ストップロス(Stop Loss)」と呼ばれます。

損切りの主な目的は、たった一度の取引で致命的な損失を被ることを避け、大切な投資資金を守ることにあります。

あらかじめ「この水準まで価格が下がったら(または上がったら)決済する」というルールを決めておくことで、感情に流されずに損失額を限定できます。

これは、いわば自動車の緊急ブレーキのようなもので、万が一の事態に備えて、より深刻な結果を防ぐための重要な安全装置と言えるでしょう。

損失を確定させることは精神的に辛いかもしれませんが、将来の取引機会を守るための賢明な判断なのです。

(2) CFD取引における損切りの重要性

損切りはあらゆる投資において重要ですが、特にCFD取引においては、その重要性が格段に高まります。

その最大の理由は、CFD取引特有の「レバレッジ」にあります。

レバレッジについては後ほど詳しく説明しますが、これは少ない資金(証拠金)で、その何倍もの金額の取引を可能にする仕組みです。

レバレッジは、予想通りに価格が動けば大きな利益をもたらしますが、逆に予想が外れた場合には、損失も同様に拡大させてしまいます。

わずかな価格変動でも、レバレッジ効果によって、預けた証拠金に対して非常に大きな損失が発生する可能性があるのです。

そのため、CFD取引において損切りを適切に行うことは、単なる推奨事項ではなく、市場で生き残るための必須のスキルと言えます。

「CFD 損切り」を怠ると、たった一度の失敗で資金の大部分、あるいは全てを失ってしまうリスクがあることを、常に意識しておく必要があります。

1.2 CFD取引の特徴とリスク

(1) レバレッジ効果とその影響

CFD取引の最大の特徴は「レバレッジ」です。

レバレッジとは「てこの原理」を意味し、少ない資金(証拠金)を担保にして、その何倍もの大きな金額の取引ができる仕組みを指します。

例えば、レバレッジ10倍で取引する場合、10万円の証拠金で100万円分の取引が可能になります。

このレバレッジ効果により、投資対象の価格が少し動いただけでも、大きな利益を得るチャンスがあります。

しかし、これは同時に、損失方向にも同じ効果が働く「諸刃の剣」であることを理解しなければなりません。

予想と反対に価格が動いた場合、レバレッジによって損失も大きく膨らみます。

場合によっては、預けた証拠金の額を超える損失が発生する可能性すらあります。

レバレッジが高ければ高いほど、ハイリスク・ハイリターンな取引となるため、損切りによるリスク管理が不可欠となるのです。

(2) ロスカットと追証の仕組み

CFD取引には、「ロスカット」と「追証(おいしょう)」という、投資家保護と証券会社のリスク管理のための仕組みがあります。

「ロスカット」とは、保有しているポジションの含み損が拡大し、口座の純資産額(有効証拠金)が、取引に必要な証拠金(必要証拠金)に対して一定の割合(証拠金維持率)を下回った場合に、証券会社によって強制的にポジションが決済される仕組みです。

これは、投資家の損失が預けた証拠金の額を超えて、口座残高がマイナスになることを防ぐための、証券会社側の最終的な安全装置です。

しかし、ロスカットが執行される時点では、すでに投資家は大きな損失を被っている状態です。

「追証」とは、「追加証拠金」の略で、証拠金維持率がロスカットレベルよりは高いものの、証券会社が定める一定の警告レベルを下回った場合に、そのレベルまで回復させるために追加の資金を入金するよう求められることです。

追証が発生すると、指定された期限までに追加の入金を行うか、ポジションの一部または全部を決済して証拠金維持率を回復させる必要があります。

期限までに対応できない場合、最終的にロスカットが執行されることになります。

重要なのは、トレーダー自身が設定する「損切り」と、証券会社によって強制的に行われる「ロスカット」は全く異なるものだということです。

ロスカットはあくまで最終防衛ラインであり、これに頼るような取引は非常に危険です。

レバレッジを効かせたCFD取引では、損切りを適切に行うことで損失を自らコントロールし、追証やロスカットが発生する事態を未然に防ぐことが、賢明なリスク管理と言えます。

2. 損切りルールの設定方法

2.1 損切りラインの決め方

(1) ATR(平均的な値動き)を用いた設定

損切りラインを設定する客観的な方法の一つに、ATR(Average True Range)というテクニカル指標を用いる方法があります。

ATRは、特定の期間における資産価格の平均的な変動幅(ボラティリティ)を示す指標です。

ATRを使った損切り設定の基本的な考え方は、市場の「ノイズ」と呼ばれる日常的な価格のブレによって損切りが頻繁に発生するのを避けつつ、明確なトレンド転換を示す動きがあった場合にポジションを閉じる、というものです。

具体的には、まずATRの値を計算(多くの取引ツールで自動表示されます。一般的には過去14期間のATRが使われます)し、その値の一定倍率(例えば1.5倍や2倍など)を、エントリー価格から差し引いた(買いポジションの場合)または加えた(売りポジションの場合)価格を損切りラインとします。

例えば、ある銘柄の14日ATRが50円で、買いでエントリーした場合、エントリー価格から「2 × 50円 = 100円」下の価格を損切りラインとする、といった具合です。

この方法の利点は、その時々の市場のボラティリティに合わせて損切り幅を調整できる点です。

市場が活発で値動きが大きい時は損切り幅も広く、市場が静かな時は狭く設定することで、より合理的なリスク管理が可能になります。

(2) 資金管理に基づく損切り幅の設定

もう一つの重要な損切り設定方法は、自身の総取引資金に対するリスク許容度から逆算する方法です。

これは「1回の取引で失っても許容できる損失額は、総資金の何パーセントまでか」を事前に決めておくという考え方に基づきます。

一般的には、総資金の1%や2%を上限とすることが推奨されています。

具体的な計算手順は以下の通りです。

  1. まず、1回の取引で許容できる最大損失額を決めます。(例:総資金100万円の2%なら、2万円)
  2. 次に、取引するロット数(取引単位)を決めます。
  3. 最後に、最大許容損失額とロット数から、損切りまでの値幅(価格差)を計算します。(損切り幅 = 最大許容損失額 ÷ 1ポイントあたりの価値 ÷ ロット数)

この方法の最大の利点は、たとえ連続して損切りに遭ったとしても、一度の失敗で致命的なダメージを受けることを避け、長期的に市場に残り続ける可能性を高める点にあります。

ただし、この方法だけで損切りラインを決めると、テクニカル的に意味のない価格(例えば、重要なサポートラインのすぐ手前など)に設定されてしまう可能性もあります。

そのため、ATRやサポート・レジスタンスラインといったテクニカルな根拠と、資金管理に基づくリスク許容額の両方を考慮して、最終的な損切りラインと、それに合わせた取引ロット数を決定することが理想的です。

もしテクニカル的に適切な損切りラインが、資金管理ルールで許容される損失額を超えてしまう場合は、ロット数を減らして調整する必要があります。

2.2 損切りルールの運用

(1) 感情に左右されない取引の実践

損切りルールを設定すること自体は難しくありませんが、最も難しいのは、それを実際に、感情に左右されずに実行することです。

損失を確定させることへの恐怖や、「もう少し待てば価格が戻るかもしれない」という希望的観測は、ルール通りの損切りを妨げる大きな要因となります。

これを克服するためには、まず、取引を開始する「前」に、必ず損切りラインを決めておくことが重要です。

そして、エントリーと同時に損切り注文(逆指値注文など)も発注してしまう習慣をつけましょう。

これにより、ポジション保有中に価格が不利な方向に動いても、感情的な判断を挟む余地を減らすことができます。

特にやってはいけないのが、含み損が拡大している状況で、損切りラインをさらに不利な方向へ動かす(損切りを先延ばしにする)ことです。

これは損失を無限に拡大させかねない、非常に危険な行為です。

一度決めた損切りルールは、計画通りに実行することを徹底しましょう。

(2) ルールの遵守と継続的な見直し

優れた損切りルールも、一貫して実行されなければ意味がありません。

全ての取引において、例外なく、事前に定めたルールに基づいて損切りを設定し、実行することが求められます。

ただし、一度決めたルールが永遠に最適とは限りません。

市場の状況は常に変化しますし、自身の取引スキルや資金状況も変わっていきます。

そのため、定期的に(例えば1ヶ月ごとなど)自身の取引記録を振り返り、損切りルールの有効性を評価することが重要です。

損切りが頻繁に発生しすぎる(損切りラインが近すぎる)場合は、ATRの倍率やリスク許容率を見直す必要があるかもしれません。

逆に、損切りにかかった時の損失額が大きすぎる場合は、ロットサイズやリスク許容率を下げることを検討すべきでしょう。

重要なのは、感情的な反応ではなく、客観的なデータに基づいてルールを改善していくことです。

ルールを守り、その結果を分析し、改善していくというサイクルを継続することが、長期的な成功への道筋となります。

3. ロスカットと追証の詳細

3.1 ロスカットの基準と発動条件

(1) 証拠金維持率とロスカットの関係

ロスカットがいつ発動するかを理解するためには、「証拠金維持率(しょうこきんいじりつ)」という指標を知る必要があります。

証拠金維持率とは、現在の口座の純資産額(有効証拠金:口座残高 ± ポジションの評価損益)が、ポジションを保有するために最低限必要な証拠金(必要証拠金)に対して、どのくらいの割合あるかを示す数値です。

計算式は以下の通りです。 証拠金維持率(%) = (有効証拠金 ÷ 必要証拠金) × 100

CFD取引を提供する証券会社は、それぞれ独自の「ロスカットレベル」と呼ばれる証拠金維持率の最低基準を定めています。

取引による損失が拡大し、この証拠金維持率がロスカットレベルを下回ると、証券会社は顧客の損失拡大を防ぐ(そして自社のリスクを管理する)ために、強制的にポジションの一部または全部を決済します。

これがロスカットです。

例えば、ロスカットレベルが50%に設定されている場合、証拠金維持率が50%未満になった瞬間にロスカットが執行されます。

含み損が増えると有効証拠金が減少し、証拠金維持率が低下するため、ロスカットのリスクが高まります。

(2) 各証券会社のロスカットルールの違い

注意すべき点は、このロスカットが執行される証拠金維持率のレベル(ロスカットレベル)は、CFDを取り扱う証券会社によって異なるということです。

例えば、維持率100%未満でロスカットされる厳しいルールの会社もあれば、50%未満でロスカットされる会社もあります。

また、ロスカットが執行される際に、全てのポジションが一度に決済されるのか、それとも損失の大きいポジションから順番に決済されるのか、といった執行方法にも違いがある場合があります。

したがって、CFD取引を始める際には、利用する証券会社のロスカットルールを事前に必ず確認し、正確に理解しておくことが極めて重要です。

この情報は通常、証券会社のウェブサイトや取引説明書に明記されています。

以下の表は、主要な証券会社のロスカットルールの例を示したものですが、情報は変更される可能性があるため、必ずご自身で最新の公式情報を確認してください。

主要CFD証券会社のロスカットルール比較(例)

証券会社名ロスカット発動証拠金維持率追証発生証拠金維持率 (目安)執行方法 (一般的な例)
GMOクリック証券50% (株価指数CFDなど)100%全ポジション決済
DMM CFD50%100%全ポジション決済
IG証券50% (標準)75% または 100%損失の大きいポジションから段階的に決済
楽天証券CFD50%100%全ポジション決済

注: 上記は一般的な例であり、取扱商品や口座タイプによって異なる場合があります。最新かつ正確な情報は、各証券会社の公式サイトで必ずご確認ください。

この比較からもわかるように、どの証券会社を選ぶかによって、強制決済されるリスクの水準が異なります。

これは、自身の取引スタイルやリスク許容度に合った証券会社を選ぶ上での重要な判断材料となります。

3.2 追証の仕組みと対応策

(1) 追証が発生する条件

「追証(おいしょう)」は、ロスカットに至る前の警告段階として機能します。

証拠金維持率が、ロスカットレベルよりは高いものの、証券会社が別途定める「追証判定レベル」(例えば100%など)を下回った場合に発生します。

追証が発生すると、証券会社から顧客に対し、指定された期限までに追加の資金を入金するか、保有ポジションの一部または全部を決済するなどして、証拠金維持率を追証判定レベル以上に回復させるよう通知がなされます。

追証は、いわば「このままではロスカットになりますよ」という最後通告のようなものです。

もし期限までに要求された対応(追加入金またはポジション決済)が行われなかった場合、証券会社は強制的にポジションを決済(ロスカット)することになります。

(2) 追証を回避するための資金管理

追証や、その先にあるロスカットを回避するための最も効果的な方法は、そもそも追証が発生するような状況に陥らないための、事前のリスク管理です。

具体的には、以下の点が重要になります。

  1. 適切なレバレッジ管理: 過度なレバレッジを避け、自身の資金力に見合った範囲で取引を行うこと。
  2. 損切りルールの徹底: 事前に決めた損切りルールを厳守し、損失が小さいうちに確定させること。損切りが適切に機能していれば、証拠金維持率が危険水域まで低下する前にポジションが決済されるはずです。
  3. 十分な余剰資金の確保: 口座資金の全てを必要証拠金として使うのではなく、価格変動に耐えられるだけの十分な「余剰証拠金(よじょうしょうこきん)」を常に確保しておくこと。
  4. 証拠金維持率のモニタリング: 特に複数のポジションを保有している場合や、市場の変動性が高い時には、自身の証拠金維持率をこまめに確認する習慣をつけること。

追証の通知を受けたということは、自身の想定以上に損失が拡大し、リスク管理が機能していない、あるいは非常に厳しい状況にあるという明確なサインです。

単に要求された金額を入金してその場をしのぐだけでなく、なぜ追証が発生したのか(レバレッジが高すぎたのか、損切りが遅れたのか、ポジションサイズが大きすぎたのか等)を冷静に分析し、取引戦略やリスク管理体制そのものを見直す機会と捉えるべきです。

4. 損切りを活用したリスク管理戦略

4.1 損切りのタイミングと判断基準

(1) テクニカル指標を用いた判断

損切りラインの設定には、ATR以外にも様々なテクニカル分析の手法が利用できます。

これらを活用することで、より客観的で根拠のある損切り判断が可能になります。

  • サポートラインとレジスタンスライン: サポートライン(支持線)は価格の下落を支えると考えられる水準、レジスタンスライン(抵抗線)は価格の上昇を抑えると考えられる水準です。買いポジションの場合は重要なサポートラインの少し下、売りポジションの場合は重要なレジスタンスラインの少し上を損切りラインとするのが一般的です。これらのラインが明確に破られた場合、当初の相場観が否定されたと判断できるためです。
  • 移動平均線: 特定期間の価格の平均値を結んだ線です。上昇トレンドでは移動平均線がサポートとして機能し、下降トレンドではレジスタンスとして機能することがあります。トレンドフォロー戦略の場合、買いポジションなら注目している移動平均線を下回ったら損切り、売りポジションなら上回ったら損切り、といったルールが考えられます。価格の動きに合わせて損切りラインを引き上げていく(トレイリングストップ)際にも利用できます。
  • チャートパターン: ダブルトップ、ヘッドアンドショルダーズ、フラッグ、ペナントなど、特定のチャート形状(パターン)は、将来の価格動向を示唆することがあります。これらのパターンが否定される価格水準(例えば、ダブルトップのネックライン割れなど)を損切りラインとして設定する方法もあります。

どのテクニカル指標や手法を用いるかは、自身の取引戦略や時間軸(短期売買か長期投資かなど)に合わせて選択することが重要です。

(2) ニュースや経済指標の影響を考慮

重要な経済指標の発表(例:米国の雇用統計、各国中央銀行の政策金利発表など)や、予測不能なニュース(例:地政学的リスクの高まり、自然災害など)は、市場価格を急激に変動させる要因となります。

このような時、設定していた損切り注文が指定した価格で約定せず、それよりも不利な価格で決済されてしまう「スリッページ」が発生するリスクが高まります。

このリスクを考慮した戦略も必要です。

  • イベント前の取引回避: もし自身の取引戦略が短期的な値動きを狙うものであれば、重要なイベントの直前には新たなポジションを持たない、という選択も有効です。
  • ポジションサイズの調整: イベントをまたいでポジションを持ち越す場合は、通常よりもロット数を減らす、あるいは一時的に損切りラインを広げる(ただし、資金管理ルールで許容される範囲内で)ことで、予期せぬ価格変動に対する耐性を高めることができます。
  • スリッページリスクの認識: 損切り注文は、必ずしも指定した価格での決済を保証するものではない、ということを常に念頭に置く必要があります。特に流動性が低下しやすい市場のオープン時やクローズ時、イベント発表時には注意が必要です。

例えば、日経平均株価(Nikkei 225)に連動するCFDを取引する場合、日本の株式市場の取引時間(東京証券取引所:前場9:00~11:30、後場12:30~15:00)の前後は価格が大きく動くことがあります。

また、日本の市場が閉まっている夜間や早朝でもCFDは取引されていることが多く、その間に海外市場で大きな出来事があれば、翌朝の市場開始時に大きな価格差(ギャップ)が生じ、スリッページのリスクが高まることも考慮に入れるべきでしょう。

4.2 損切り後の対応と戦略の見直し

(1) 損失の原因分析と教訓の抽出

損切り注文が約定したとき、それは取引が失敗したという意味ではありません。

むしろ、リスク管理計画が意図した通りに機能し、損失を限定できた証拠と捉えるべきです。

しかし、だからといって何も反省しなくて良いわけではありません。

損切りとなった全ての取引について、なぜ損失に至ったのかを冷静に分析することが重要です。

  • エントリーの根拠は正しかったか?
  • 損切りラインの設定はルール通りだったか?
  • 市場が単に予想と反対に動いただけなのか、それとも分析や判断に誤りがあったのか?
  • 予期せぬニュースやイベントが影響したのか?

これらの点を振り返るために、「取引日誌(トレーディングジャーナル)」をつけることを強く推奨します。

エントリー価格、損切り価格、決済価格、取引の根拠、損切りの理由などを記録しておくことで、客観的な分析が可能になります。

(2) 次回取引への戦略的な反映

原因分析から得られた教訓は、次の取引に活かさなければなりません。

  • もし損切りラインが近すぎて頻繁に引っかかるようであれば、ATRの倍率やリスク許容率の調整を検討します。
  • エントリーシグナルの精度が低いと感じるなら、エントリー条件をより厳しく見直す必要があるかもしれません。
  • 特定のニュースイベントで損失を出すことが多いなら、そのイベント前後の取引ルールを再考します。

最も重要なのは、損失を取り返そうと焦って、すぐに次の取引に飛びつく「リベンジトレード」を避けることです。

感情的な取引はさらなる損失を招く可能性が高いです。

冷静さを取り戻し、取引計画に従って、次の有効な取引機会を待つ姿勢が大切です。

損切りは、取引戦略を改善するための貴重なフィードバックと捉え、継続的な学習と改善のプロセスに繋げていきましょう。

5. 実際の損切り事例と教訓

5.1 強制ロスカットの体験談

(1) GMOクリック証券でのロスカット事例

ここでは、具体的な証券会社名を挙げて、ロスカットの事例を考えてみましょう(これは一般的なシナリオであり、特定の個人の体験談ではありません)。

例えば、GMOクリック証券を利用しているトレーダーがいたとします。

GMOクリック証券の株価指数CFDなどでは、証拠金維持率が50%を下回るとロスカットが執行されるルールが一般的です(最新ルールは要確認)。

あるトレーダーが、レバレッジを高く設定し、大きなポジションを持ちました。

しかし、相場が予想と反対方向に大きく動きました。

このトレーダーは、損切り注文を入れていなかったか、あるいは損失を受け入れられずに損切りラインをどんどん不利な方向へ動かしてしまいました。

その結果、含み損が急速に拡大し、有効証拠金が減少し、ついに証拠金維持率が50%を下回ってしまいました。

その瞬間、GMOクリック証券のシステムにより、保有していた全てのポジションが強制的に決済され、口座には大きな損失だけが残りました。

中には、証拠金維持率が100%を割った時点でロスカットされるような、より厳しいルールを採用している場合もあるため、利用する証券会社のルール確認は必須です。

この事例から得られる教訓は明確です。

レバレッジ取引の損失拡大スピードは非常に速いこと、そして、証券会社のロスカットに頼るのではなく、自ら設定した損切りルールを早期に実行することがいかに重要か、ということです。

また、利用する証券会社のロスカットルールを正確に把握しておく必要性も浮き彫りになります。

(2) 損切り設定の見落としによる損失

初心者にありがちな失敗として、取引に夢中になるあまり、損切り注文を設定し忘れる、あるいは「後で設定しよう」と思っているうちに忘れてしまうケースがあります。

「少しだけだから大丈夫だろう」「常にチャートを見ているから手動で決済できる」といった油断が、大きな損失につながることがあります。

市場は時に、ほんの数分、あるいは数秒で、予測不能な急変動を見せることがあります。

損切り注文を設定していなければ、そのような急変動に対応できず、気づいた時には含み損が許容範囲をはるかに超えてしまっている、という事態になりかねません。

教訓は、「損切り注文の設定は、エントリーと同時に行うことを徹底する」ということです。

これを取引のルーティンの一部として組み込む規律が求められます。

5.2 大損の原因と対策

(1) 損切りの先送りによる損失拡大

計画通りに損切りラインに価格が達したにもかかわらず、「もう少し待てば戻るかもしれない」「ここで損を確定させたくない」という心理が働き、損切り注文を取り消したり、さらに不利な価格帯へ移動させたりする行為は、大損につながる典型的なパターンです。

これは「損切り貧乏」を恐れるあまり、結果的に「塩漬け」状態を作り出し、最終的には耐えきれなくなって、当初の損切りラインよりもはるかに大きな損失で決済せざるを得なくなる、という悪循環を生みます。

この心理的な罠にはまらないための対策は、やはり「ルールの絶対的な遵守」です。

取引前に決めた損切りルールは、感情を排して機械的に実行する。

小さな損失は、より大きな損失を防ぐための必要経費であると割り切る考え方が重要です。

損切りを先延ばしにすることは、問題の解決ではなく、問題をさらに悪化させる行為であることを肝に銘じましょう。

(2) 感情的な取引のリスクとその回避策

損失を拡大させる原因は、損切りの先延ばしだけではありません。

様々な感情が、合理的な取引判断を妨げます。

  • FOMO(Fear of Missing Out:取り残されることへの恐怖): 他の人が利益を上げているのを見て、「乗り遅れたくない」と焦り、十分な分析や計画なしに高値掴みで飛びつき、適切な損切りを設定しない。
  • リベンジトレード: 損失を出した後、それを取り返そうと躍起になり、冷静さを失ったまま、通常よりも大きなリスクを取った無謀な取引をしてしまう。
  • 勝利後の慢心: 何度か連続して利益を上げると、「自分は相場が読める」と過信し、ルールを無視して大きなポジションを取ったり、損切りを怠ったりして、一度の失敗でそれまでの利益を全て失う。

これらの感情的な取引を回避するための策は以下の通りです。

  • 取引計画の作成と遵守: エントリー、エグジット(利益確定)、損切りのルールを明確に文書化し、常にその計画に従って取引する。
  • 冷静さの維持: 大きな利益を得た後も、大きな損失を出した後も、一度取引から離れて休憩し、感情が落ち着くのを待つ。
  • 客観性の確保: 取引日誌を活用し、感情ではなくデータに基づいて自身の取引を評価する。

CFD取引における損切りは、単なるテクニックではなく、自己規律と感情コントロールの実践そのものです。

特にレバレッジがかかっている状況では、感情のブレが資金に与える影響も増幅されます。

これらの心理的な側面を理解し、対策を講じることが、安定した取引を行う上で不可欠です。

6. 損切りをサポートするツールとサービス

6.1 損益計算ツールの活用

(1) 損益計算やロスカットレートの計算方法

CFD取引を始める前に、潜在的なリスクとリターンを把握しておくことは非常に重要です。

多くの証券会社は、取引プラットフォーム内やウェブサイト上で、損益(P/L)計算ツールやロスカットシミュレーションツールを提供しています。

これらのツールを使えば、特定の銘柄で、特定のロット数を取引し、特定の価格でエントリーした場合、損切りラインや目標利益確定ラインに達した際の損益額を事前に計算できます。

また、現在の口座状況と、これから持とうとしているポジションの情報を入力することで、その取引を行った場合の証拠金維持率や、ロスカットが執行されるおおよその価格(ロスカットレート)をシミュレーションすることも可能です。

これらの計算ツールを取引前に活用することで、「この取引で最大いくら損失が出る可能性があるか」「このロット数だとロスカットまでどのくらいの余裕があるか」を具体的に把握でき、資金管理に基づいた適切なポジションサイズ(ロット数)の決定や、損切りラインの設定に役立ちます。

(2) 証拠金維持率の確認と管理

取引プラットフォームには、現在の「証拠金維持率」がリアルタイムで表示される機能が必ず備わっています。

自分が利用しているプラットフォームのどこでこの数値を確認できるのかを、まず把握しておきましょう。

そして、特に複数のポジションを保有している場合や、相場が大きく変動している時には、この証拠金維持率を定期的にチェックする習慣をつけることが重要です。

常に自身の口座状況を把握し、追証やロスカットの危険水域(各証券会社が定める維持率)から十分に余裕のある水準を保つように心がけることが、リスク管理の基本となります。

6.2 各証券会社のサポート機能

(1) 自動ロスカット設定の有無

まず明確にしておくべきは、トレーダー自身が設定する「損切り(ストップロス)」と、証券会社が強制的に行う「ロスカット(マージンコール)」は異なるものだということです。

全ての規制されたCFDブローカーは、顧客の損失が証拠金を超えるのを防ぐため、自動的なロスカットシステムを導入しています。

トレーダーが任意で設定できるリスク管理機能としては、個別の取引ごとに設定する損切り注文が基本となります。

一部のブローカーでは、口座全体の損失額に基づいて自動で全ポジションを決済するような、追加的なリスク管理設定を提供している場合もありますが、一般的ではありません。

基本的には、トレーダー自身が各取引に対して損切り注文を設定し、リスクをコントロールすることが求められます。

(2) 追証回避のための通知機能

多くの証券会社では、顧客の証拠金維持率が一定の水準(例えば追証発生レベルなど)まで低下した場合に、注意喚起のためのアラート(通知)機能を提供しています。

これらの通知は、取引プラットフォーム上のポップアップ表示、電子メール、場合によってはSMS(ショートメッセージサービス)などで送られてきます。

これらの通知機能は、口座状況が悪化していることを早期に知る上で役立ちます。

もし利用している証券会社で設定が可能であれば、これらのアラートを有効にしておくことをお勧めします。

ただし、これらの通知はあくまで「警告」であり、これに頼り切った取引は望ましくありません。

アラートが鳴る状況は、すでにリスクが高まっている状態です。

最も重要なのは、事前の損切り設定と適切な資金管理によって、そもそもアラートが鳴るような状況を回避する、予防的なリスク管理を実践することです。

7. 損切りを成功させるための心構え

7.1 感情のコントロールと取引の一貫性

(1) 損失への耐性と冷静な判断

CFD取引を含むあらゆる投資において、損失を完全に避けることは不可能です。

成功しているトレーダーは、損失を出さないのではなく、損失を効果的に管理しているのです。

損切りが執行されることは、計画通りにリスクがコントロールされた証であり、個人的な失敗ではありません。

この事実を受け入れ、「損切りは取引の必要経費である」という認識を持つことが重要です。

取引中に含み損が拡大すると、恐怖や焦りといった感情が生まれやすくなります。

しかし、そのような感情に駆られて下した判断(例えば、損切りラインを動かすなど)は、ほとんどの場合、状況をさらに悪化させます。

常に冷静さを保ち、事前に定めた取引計画に従って行動することが求められます。

(2) 一貫した取引ルールの重要性

取引で長期的に利益を上げるためには、優位性のある取引戦略を、一貫して実行し続けることが不可欠です。

これには、損切りルールの遵守も含まれます。

「今回だけは特別」「なんとなく大丈夫そうだ」といった理由で損切りルールを破ることは、戦略全体の有効性を損ない、予期せぬ大きなリスクを呼び込むことになります。

全ての取引において、同じルールを一貫して適用することで、規律が養われ、自身の取引パフォーマンスを客観的に評価するための信頼できるデータを得ることができます。

一貫性こそが、規律あるトレーダーへの道であり、長期的な成功の基盤となります。

7.2 継続的な学習と戦略の改善

(1) 取引記録の分析とフィードバック

取引日誌(トレーディングジャーナル)の重要性は、すでに述べた通りです。

定期的に自身の取引記録(利益が出た取引も、損失が出た取引も)を振り返り、分析することが、スキルアップのための最も効果的な方法の一つです。

特に損切りにかかった取引については、なぜそうなったのかを深く掘り下げます。

損切りラインの設定は適切だったか? エントリーのタイミングや根拠に問題はなかったか? リスク管理(ロットサイズ)は適切だったか?

これらの分析を通じて得られた気づきや反省点を、次の取引戦略に具体的に反映させていくことが重要です。

(2) 市場の変化に対応する柔軟性

市場の状況は常に変化しています。

ボラティリティ(価格変動の度合い)が高まる時期もあれば、静かな時期もあります。

ある市場環境で有効だった損切り戦略(例えば、損切り幅の設定)が、別の環境ではうまく機能しないこともあります。

成功するトレーダーは、市場の変化を敏感に察知し、自身の戦略を柔軟に調整していく能力を持っています。

これには、継続的な市場分析や経済ニュースのチェック、そして自身の取引記録の分析に基づいた、戦略の定期的な見直しが含まれます。

ただし、その調整は思いつきや感情に基づくものではなく、客観的な分析と検証に基づいたものであるべきです。

継続的な学習と、データに基づいた戦略改善への意欲が、変化し続ける市場で生き残るための鍵となります。

まとめ

この記事では、CFD取引における「CFD 損切り」の基本から、具体的なルール設定、失敗しないためのコツ、そして成功のための心構えまでを解説してきました。

CFD取引はレバレッジ効果により大きなリターンを期待できる反面、同様に大きな損失リスクも伴います。

このリスクを管理し、大切な資金を守るために、「損切り」は絶対に欠かせないスキルです。

ATRのようなテクニカル指標や、自身の資金に対するリスク許容度に基づいて客観的な損切りルールを設定し、そして何よりも、そのルールを感情に左右されずに一貫して実行する規律が求められます。

また、証券会社による強制決済である「ロスカット」や、その前段階である「追証」の仕組みを理解することは、自ら損切りを行うことの重要性を再認識させてくれます。

CFD取引で長期的に成功するためには、損切りをマスターすることが不可欠です。

損失は取引の一部であると受け入れ、それを適切に管理することに焦点を当てましょう。

これからCFD取引を始めるにあたっては、リスク管理を真剣に捉えることが成功への第一歩です。

使いやすい取引ツールや、ロスカットルールなどの情報が明確に開示されている信頼できるCFD証券会社を選ぶことも、安心して取引を進める上で助けとなるでしょう。

ぜひ、この記事で学んだ知識を活かし、継続的な学習と規律ある実践を通じて、賢明なCFDトレーダーを目指してください。

鬼河原

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

ミニCFD GMOクリック証券

※CFD:差金決済取引

この記事を書いた人

塚越ヒロのアバター 塚越ヒロ デジタルテレワーカー

IT企業勤務の投資家。        
このブログでは、CFD(差金決済取引)を中心に、株式投資で得た知識や体験を発信します。
【株式投資歴2年】ミニCFDで資産形成中。   
【ミニCFDの魅力】少額で投資の勉強ができる。 
 ミニCFD(数百円)から実力をつけて、CFDにステップアップ。           

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