CFD取引を始めようと考えている、または始めたばかりのあなたが、「CFD ロスカット」という言葉を検索しているのは、おそらく「ロスカットって何?」「なんだか怖い制度なの?」「大損しないためにはどうすればいいの?」といった疑問や不安を抱えているからではないでしょうか。
レバレッジを効かせて大きな利益を狙えるCFD取引ですが、同時に損失が拡大するリスクも存在します。
もし、ロスカットの仕組みを正しく理解しないまま取引を始めてしまうと、予期せぬタイミングで強制的にポジションが決済され、大切な資金を失ってしまう恐れがあります。
しかし、安心してください。
この記事では、CFDのロスカットの基本的な仕組みから、なぜロスカットが必要なのか、そして最も重要なロスカットを回避するための具体的な対策まで、初心者にもわかりやすく解説します。
この記事を読むことで、あなたはロスカットが投資家保護のための重要な安全装置であると理解し、過度な不安を取り除くことができるでしょう。
さらに、証拠金維持率の計算方法や、各証券会社のロスカットルールの違い、回避策の実践方法を知ることで、リスクをコントロールしながらCFD取引に取り組む準備が整います。
ロスカットの仕組みを正しく理解し、適切な対策を講じれば、CFD取引のリスクを管理し、より安心して資産運用を進めることが可能になります。
本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の手法や知識を推奨したり、売買を勧めたりするものではありません。
本記事に記載されている情報については、正確性、完全性、有用性を確保するために努力しておりますが、その保証は致しかねます。
投資対象や商品の選択など、実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。
必要に応じて、財務アドバイザーや税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
本記事の情報を利用した結果として発生するいかなる損害についても、著者は一切の責任を負いません。
1. CFD取引におけるロスカットとは
CFD取引のロスカットは、損失の拡大を防ぐための強制決済システムです。証拠金維持率が一定水準を下回ると発動し、投資家と証券会社双方を保護する目的があります。
1.1 ロスカットの基本概念
CFD取引におけるロスカットとは、保有しているポジションの損失が一定水準に達した場合に、さらなる損失の拡大を防ぐため、証券会社が強制的にそのポジションを決済する仕組みを指します。
これは、レバレッジを利用するCFD取引において、非常に重要な安全装置として機能します。
レバレッジは少ない資金で大きな取引を可能にする一方、相場が不利な方向に動いた場合、損失も同様に拡大します。
ロスカットは、損失が預けた証拠金の額を上回ってしまうような事態を防ぐために設けられています。
トレーダーが任意で設定する損切り(ストップロス)とは異なり、ロスカットは証券会社の基準に基づいて自動的かつ強制的に執行される点が特徴です。
この制度があることで、トレーダーは理論上、預けた証拠金以上の損失を負うリスクを低減できます。

ロスカットって、損が大きくなったら強制的に決済されちゃうってことですか? ちょっと怖いですね…。



そうですね。でも、大きな借金を防ぐための安全装置でもあるんですよ。仕組みを理解すれば、怖さは減ります。
1.2 ロスカットが導入される理由と目的
ロスカット制度が導入されている主な理由は、第一に投資家(トレーダー)の資金を保護するためです。
レバレッジ取引では、相場の急変動によって短時間で大きな損失が発生する可能性があります。
もしロスカット制度がなければ、損失が預けた証拠金の額を超え、トレーダーが追加の支払い(借金)を負うリスクが高まります。
ロスカットは、損失が証拠金の範囲内に収まるように強制決済することで、トレーダーを過大な損失から守る役割を果たします。
第二に、証券会社自身のリスクを管理するためでもあります。
トレーダーの損失が証拠金を超えた場合、証券会社はその不足分を回収できないリスク(貸し倒れリスク)を負います。
ロスカット制度は、証券会社が健全な経営を維持するためにも不可欠な仕組みといえます。
このように、ロスカットはトレーダーと証券会社双方を守るためのセーフティネットとして機能しています。



なるほど、投資家を守るためでもあるんですね。証券会社のためだけかと思っていました。



両方を守る仕組みです。特にレバレッジ取引では、このセーフティネットが不可欠なんです。安心して取引するためにも、しっかり理解しましょう。
1.3 ロスカットと証拠金維持率の関係
ロスカットが発動するかどうかの判断基準となるのが、「証拠金維持率(しょうこきんいじりつ)」です。
証拠金維持率とは、現在保有しているポジションに必要な証拠金(必要証拠金)に対して、口座内の純資産(有効証拠金)がどの程度の割合あるかを示す指標です。
有効証拠金は、口座残高に保有ポジションの評価損益を加減した金額で、口座の実質的な価値を表します。
相場が不利な方向に動き、保有ポジションの評価損が拡大すると、有効証拠金は減少します。
有効証拠金が減少すると、証拠金維持率も低下します。
そして、証拠金維持率が各証券会社の定めた特定の水準(ロスカットライン)を下回った場合に、ロスカットが発動します。
つまり、証拠金維持率は、自身の口座がロスカットされる危険度を示すバロメーターの役割をはたしています。
この率を常に意識することが、CFD取引のリスク管理において極めて重要です。



証拠金維持率…? それが下がるとロスカットされるんですね。どうやって計算するんですか?



その通りです! この維持率が、ロスカットされるかどうかの重要な指標になります。計算方法は次の章で詳しく解説しますね。
2. ロスカットの発動条件と計算方法
ロスカットは証拠金維持率に基づいて発動します。維持率は「有効証拠金 ÷ 必要証拠金 × 100」で計算され、各証券会社が設定した基準(例:100%、50%など)を下回ると強制決済が実行されます。証券会社ごとに基準が異なるため注意が必要です。
2.1 証拠金維持率の計算式
証拠金維持率の具体的な計算式は以下のとおりです。
証拠金維持率 (%) = (有効証拠金 ÷ 必要証拠金) × 100
ここで、各項目は以下を意味します。
- 有効証拠金(純資産額): 口座残高 + 評価損益(保有ポジションの未実現損益)
- これは、もし現在保有している全てのポジションを決済した場合に、口座に残るであろう金額を示します。評価益が出ていれば口座残高より多くなり、評価損が出ていれば少なくなります。
- 必要証拠金: 現在保有しているポジションを維持するために最低限必要な証拠金の合計額
- これは、取引する金融商品の価格、ポジションのサイズ(取引数量)、およびレバレッジに基づいて計算されます。
例えば、以下のような状況を考えてみましょう。
- 口座残高: 100,000円
- 保有ポジションの評価損益: -20,000円(含み損)
- 保有ポジションの必要証拠金: 50,000円
この場合の有効証拠金は、
100,000円 + (-20,000円) = 80,000円
となります。
そして、証拠金維持率は、
(80,000円 ÷ 50,000円) × 100 = 160%
と計算されます。
この計算方法を理解することで、ご自身の口座状況を把握し、あとどれくらいの損失が発生するとロスカットラインに達してしまうのかを予測できます。
定期的に証拠金維持率を確認し、リスクレベルを把握することが、ロスカットを回避するための第一歩です。



計算式、ありがとうございます! これで自分の口座の状況をチェックできますね。



はい、定期的にこの維持率を確認する習慣をつけるのがおすすめです。相場の急変に備える第一歩になりますよ。
2.2 ロスカットの発動基準(各証券会社の例)
ロスカットが発動する証拠金維持率の基準(ロスカットライン)は、証券会社によって異なります。
以下に、いくつかの主要な証券会社の例を挙げますが、これらの情報は変更される可能性があるため、必ず取引を行う証券会社の公式サイトで最新の情報を確認してください。
- (1) GMOクリック証券:ポジションごとにロスカットレートを設定できます。ただし、口座全体の証拠金維持率によるロスカットルールも存在します(通常50%)。
- (2) DMM CFD:証拠金維持率が100%未満になると、保有している全てのポジションが強制決済されます。
- (3) 外為どっとコム(CFDネクスト):商品区分口座(例:株価指数CFD、商品CFD)ごとにロスカット判定が行われます。各区分口座の証拠金維持率が100%を下回ると、その区分口座内の全ポジションがロスカットされます。
- (4) マネースクエア(トラリピCFD):証拠金維持率が100%未満になるとロスカットが発動します。
- (5) ヒロセ通商(LION CFD):有効比率(証拠金維持率と同義)が100%未満になるとロスカットが発動します。
- (6) SBIネオトレード証券:証拠金維持率が100%未満になると、保有している全ての建玉(ポジション)が強制決済されます。
- (7) 楽天証券(楽天CFD):証拠金維持率が50%以下になると、保有している全ての建玉が決済されます。
- (8) くりっく株365(取引所CFD):有効比率(証拠金維持率に類似)が75%以下になるとロスカットが発動します(取扱証券会社により異なる場合あり)。
- (9) 三菱UFJモルガン・スタンレー証券(eスマートCFD):時価評価額(有効証拠金)が必要証拠金の75%未満になるとロスカットが発動します。
- (10) GMO外貨(外貨ex CFD):証拠金維持率が100%未満になると、まず追加証拠金(追証)が発生します。追証が解消されない場合にロスカットが執行される可能性があります(具体的なロスカットルールは要確認)。
このように、ロスカットラインは50%、75%、100%など、証券会社によって大きな違いがあります。
100%未満でロスカットされるルールは、有効証拠金が必要証拠金を下回った時点で即座に発動することを意味します。
一方、50%以下でロスカットされるルールは、有効証拠金が必要証拠金の半分を下回るまでポジションを維持できるため、一時的な価格変動に対する許容度は高まりますが、ロスカットされた場合の損失額は大きくなる可能性があります。
どちらのルールが良いかは、トレーダーの取引スタイルやリスク許容度によります。
100%ルールは損失を早期に限定する効果がありますが、相場のわずかな変動でロスカットされやすい側面もあります。
50%ルールは余裕がありますが、損失がより大きくなるリスクを伴います。
証券会社を選ぶ際には、このロスカットラインの違いが、ご自身の取引戦略やリスク管理方針に合っているかを検討する重要な要素となります。
■主要CFD証券会社のロスカット・追証ルール比較(例)
証券会社名 | ロスカット発動基準(証拠金維持率) | ロスカット対象 | 追証発生基準(証拠金維持率) | ロスカット手数料 | 備考(アラート等) |
GMOクリック証券 | 50%(口座全体)、ポジション毎設定可 | 全ポジション/ポジション毎 | 100%未満 | 無 | アラートあり(任意設定可) |
DMM CFD | 100%未満 | 全ポジション | 100%未満(追証なしでロスカット) | 無 | アラートあり(120%等) |
外為どっとコム (CFDネクスト) | 100%未満(商品区分口座ごと) | 区分口座内全ポジション | 100%未満 | 無 | アラートあり |
マネースクエア | 100%未満 | 全ポジション | 100%未満 | 無 | アラートあり(150%以下、125%以下) |
ヒロセ通商 (LION CFD) | 100%未満 | 全ポジション | 100%未満 | 無 | アラートあり |
SBIネオトレード証券 | 100%未満 | 全建玉 | 100%未満 | 無 | アラートあり(120%未満) |
楽天証券 (楽天CFD) | 50%以下 | 全建玉 | 70%未満 | 無 | アラートあり(100%未満、70%未満) |
くりっく株365 | 75%以下(取扱会社による) | 全ポジション | 100%未満 | 取扱会社による | 取扱会社による |
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 | 75%未満 | 全ポジション | 100%未満 | 要確認 | 要確認 |
GMO外貨 (外貨ex CFD) | 追証解消不可時(要確認) | 全ポジション | 100%未満 | 無 | アラートあり |
- 注意: 上記は一例であり、ルールは変更される可能性があります。最新の情報は必ず各証券会社の公式サイトでご確認ください。



えっ、証券会社によって全然ルールが違うんですね! 100%のところも50%のところもあるなんて…。



そうなんです。自分の取引スタイルやリスク許容度に合った証券会社を選ぶことが大切ですよ。この比較表を参考に、各社の最新情報を必ず確認してくださいね。
3. ロスカットの種類と特徴
ロスカットには主に3つのタイプがあります。ポジションごとに判定されるもの、口座全体の証拠金維持率で全ポジションが決済されるもの、商品区分口座ごとに判定されるものです。それぞれの特徴を理解し、利用する証券会社の方式を確認しましょう。
3.1 ポジションごとのロスカット(例:GMOクリック証券)
一部の証券会社では、ポジションごとにロスカット基準を設定できる場合があります。
例えば、GMOクリック証券では、各ポジションに対して個別にロスカットレート(価格)を設定する機能があります(ただし、口座全体の維持率によるロスカットも別途存在します)。
この方式の利点は、特定のポジションの損失が拡大しても、他の健全なポジションや含み益のあるポジションまで強制的に決済されるのを避けられる可能性がある点です。
損失を出しているポジションだけを切り離し、全体のポートフォリオへの影響を最小限に抑える戦略的な判断が可能になります。
しかし、この方式を提供している証券会社は限られています。
また、複数のポジションを保有している場合、どのポジションからロスカットされるかの判断や、全体の証拠金維持率への影響を把握するのが複雑になる側面もあります。
一つのポジションがロスカットされても、全体の維持率が十分に回復しなければ、続けて他のポジションもロスカットされる可能性も考慮に入れる必要があります。



ポジションごとにロスカットしてくれるなら、良いポジションは残せる可能性があるんですね?



理論上はそうですが、提供している証券会社は限られますし、仕組みも複雑な場合があります。多くは口座全体での判定なので、基本はそちらで理解しておきましょう。
3.2 口座全体のロスカット(例:DMM CFD、楽天証券)
最も一般的なロスカットの方式は、口座全体の証拠金維持率に基づいて判定されるものです。
この方式では、口座全体の証拠金維持率が、証券会社の定めるロスカットライン(例:DMM CFDでは100%未満、楽天証券では50%以下)を下回った瞬間に、保有している全てのポジションが強制的に決済されます。
この方式の特徴は、シンプルでわかりやすい点です。
ロスカットが発動した場合の結果(全ポジションの決済)が明確です。
一方で、含み益が出ているポジションや、戦略的に保有し続けたいポジションも、含み損を出しているポジションと一緒に全て決済されてしまうというデメリットがあります。
一部のポジションの損失が原因で、ポートフォリオ全体が解消されてしまうため、トレーダーにとっては厳しい結果となる場合があります。
この方式を採用している証券会社が多いからこそ、口座全体の証券金維持率を常に高く保つ、余裕を持った資金管理が一層重要になります。



全部決済されちゃうんですか! それはちょっと困るかも…。



はい、これが一番一般的なロスカットの方式です。だからこそ、維持率がロスカット水準に近づかないように、余裕を持った資金管理が重要になるんです。
3.3 商品区分口座ごとのロスカット(例:外為どっとコム)
一部の証券会社では、取り扱うCFD商品をカテゴリー(例:株価指数CFD、商品CFD、外国為替CFDなど)ごとに区分し、それぞれの区分口座内で証拠金管理とロスカット判定を行う方式を採用しています。
例えば、外為どっとコムの「CFDネクスト」がこのタイプに該当します(要最新情報確認)。
この方式では、例えば株価指数CFDの区分口座の証拠金維持率がロスカットラインを下回ったとしても、商品CFDの区分口座の維持率が健全であれば、商品CFDのポジションは決済されずに維持されます。
リスクが商品カテゴリーごとに区分されるため、ある市場での大きな損失が、他の市場のポジションに直接影響を与えるのを防げます。
複数の異なる種類の商品に分散投資しているトレーダーにとっては、リスク管理上有利に働く可能性があります。
例えば、原油価格の急落で商品CFDがロスカットされても、同時に保有していた日経平均株価指数CFDのポジションは影響を受けない、といった具合です。
ただし、区分口座ごとに資金を管理する必要があるため、全体の資金効率を考える上では注意が必要です。



株価指数CFDでロスカットされても、FXのポジションは大丈夫な場合があるんですね。



そういう仕組みの証券会社もありますね。複数の種類の商品を取引するなら、このタイプがリスク分散に役立つかもしれません。口座開設前に確認しましょう。
4. ロスカットを回避するための対策
ロスカットを回避するには、①証拠金を追加で入金する、②保有ポジションの一部を決済する、③任意証拠金制度を活用する(提供会社のみ)、④アラート通知機能を活用する、といった具体的な対策があります。これらを組み合わせて、証拠金維持率を安全な水準に保つことが重要です。
4.1 証拠金の追加預託
ロスカットを回避するための最も直接的な方法は、取引口座に追加の資金を入金(追加入金)することです。
追加入金を行うと、口座残高が増加します。
これにより、有効証拠金(= 口座残高 + 評価損益)が増えるため、証拠金維持率(= 有効証拠金 ÷ 必要証拠金 × 100)の計算式の分子が大きくなります。
結果として、証拠金維持率が上昇し、ロスカットラインから遠ざける効果があります。
証拠金維持率が低下し、ロスカットが近づいている状況で、迅速に追加資金を入金できれば、強制決済を回避できます。
ただし、これはあくまで対症療法的な対応です。
維持率が低下してから慌てて入金するのではなく、最初から十分な余裕資金をもって取引を開始することが、より健全なリスク管理といえます。
また、相場の急変時には入金手続きが間に合わないケースも考えられます。
常に即座に入金できるとは限らないため、追加入金だけに頼るのは避けるべきでしょう。



維持率が危なくなったら、お金を追加で入れればいいんですね!



はい、それは有効な手段の一つです。でも、常に余裕を持った資金で始めるのが基本ですよ。入金が間に合わないケースも考えて、計画的に取引しましょう。
4.2 ポジションの一部決済
もう一つの有効な回避策は、保有しているポジションの一部を自ら決済することです。
ポジションを決済すると、そのポジションを維持するために必要だった必要証拠金が不要になります。
これにより、口座全体の必要証拠金の合計額が減少し、証拠金維持率(= 有効証拠金 ÷ 必要証拠金 × 100)の計算式の分母が小さくなります。
結果として、証拠金維持率が上昇します。
特に、含み損を抱えているポジションを決済すれば、それ以上の損失拡大を防ぐと同時に、必要証拠金を減らして維持率を改善する効果が期待できます。
含み益のあるポジションを決済する場合は、利益を確定させ有効証拠金を増やし、かつ必要証拠金を減らすことで、維持率を大きく改善させます。
どのポジションを決済するかは、戦略的な判断が必要です。
一般的には、損失が最も大きいポジションや、今後の相場見通しが良くないと考えられるポジションから決済を検討します。
強制的なロスカットで全てのポジションが決済される前に、自らの判断で損失をコントロールする点で、この方法は能動的なリスク管理といえます。



ポジションを減らすことでも、ロスカットを避けられるんですね。どれを決済するか悩みます…。



そうですね、戦略的な判断が必要です。含み損が大きいものや、今後の見通しが悪いものから検討するのが一般的でしょうか。損切りは早めが肝心です。
4.3 任意証拠金の設定(例:GMOクリック証券)
一部の証券会社では、「任意証拠金(にんいしょうこきん)」という制度を提供しています。
これは、最低限必要な必要証拠金に加えて、トレーダーが自らの意思で追加の証拠金を特定のポジションや口座全体に割り当てることができる仕組みです(例:GMOクリック証券、要最新情報確認)。
任意証拠金を設定すると、その分だけ口座の有効証拠金が実質的に増えたものとして扱われたり、あるいは利用可能なレバレッジが制限されたりすることで、証拠金維持率の計算上有利に働き、ロスカットされにくくする効果があります。
これは、単に口座に余剰資金を入れておくだけでなく、意図的にリスク許容度を下げ、安全性を高めるための仕組みです。
あらかじめ任意証拠金を設定しておくことで、実質的なレバレッジを抑え、より保守的な取引を心がける助けになります。
利用できる証券会社は限られますが、もし利用している(または検討中の)証券会社に制度があれば、活用を検討する価値はあるでしょう。



任意証拠金? 必要証拠金とは別に、自分で設定できるんですか?



提供している証券会社なら可能です。あらかじめ多めに証拠金を設定しておくことで、実質的なレバレッジを抑え、リスクを管理しやすくする効果が期待できます。
4.4 アラート通知の活用(例:マネースクエア、SBIネオトレード証券)
多くのCFD証券会社では、証拠金維持率が一定の水準まで低下した場合に、メールやアプリのプッシュ通知などで知らせてくれる「アラート通知」機能を提供しています。
例えば、マネースクエアやSBIネオトレード証券など(要最新情報確認)では、ロスカットラインよりも高い水準(例:150%、120%など)でアラートが発動するように設定されています。
このアラート通知は、ロスカットの危険が迫っていることを早期に知らせてくれる重要なツールです。
通知を受け取ることで、トレーダーは強制ロスカットが執行される前に、証拠金の追加預託やポジションの一部決済といった対策を講じる時間的な余裕を得られます。
常に取引画面を監視していなくても、口座状況が悪化した場合に気づくことができます。
ただし、アラート通知はあくまで警告であり、それ自体がロスカットを防ぐわけではありません。
また、相場が極端に急変動した場合には、アラート通知が届いてからすぐ、あるいは通知とほぼ同時にロスカットが執行されてしまう可能性もゼロではありません。
アラート機能を活用しつつも、基本的な資金管理やリスク管理を怠らないようにしましょう。



アラート機能、便利そうですね! 設定しておけば、ずっと画面を見てなくても安心ですか?



非常に役立つ機能ですが、完全に安心は禁物です。相場が急変すれば、アラートからロスカットまで一瞬ということも。あくまで補助として活用し、基本的な資金管理は怠らないでください。
5. ロスカット発動時の注意点
ロスカットは安全装置ですが万能ではありません。相場の急変動時には想定以上の損失(スリッページ)が発生する可能性や、取引時間外・週末のリスク、一部証券会社でのロスカット手数料の存在に注意が必要です。
5.1 急激な相場変動による影響
ロスカット制度は損失拡大を防ぐためのものですが、万能ではありません。
特に、経済指標の発表時や金融危機、予期せぬニュースなどによって相場が極端に急変動した場合、問題が生じる可能性があります。
このような状況では、価格が連続的に動かず、一瞬で大きく価格が飛ぶ「窓開け(ギャップ)」が発生することがあります。
ロスカットは、証拠金維持率が基準値を下回った時点で執行される指示が出されますが、実際に約定するのはその時点での市場価格です。
もし価格がギャップダウン(窓を開けて下落)した場合、ロスカットの注文が意図した価格よりも大幅に不利な価格で約定してしまうことがあります。
これは「スリッページ」と呼ばれます。
結果として、ロスカットラインで想定されていた損失額よりも大きな損失が発生し、まれなケースではありますが、預けた証拠金の額を超える損失が発生し、口座残高がマイナス(追証を超える損失)になる可能性もゼロではありません。
ロスカットシステムは、通常の市場環境下では有効に機能しますが、流動性が低下し価格が飛びやすい異常な市場環境下では、その保護機能に限界があることを理解しておく必要があります。



えっ、ロスカットされても、預けたお金以上に損することがあるんですか!?



可能性は低いですが、ゼロではありません。特に、経済指標発表時や市場が開く月曜朝などは値が飛びやすいです。大きなイベント前はポジションを減らすなどの対策も考えましょう。
5.2 取引時間外のポジションの扱い
CFD取引では、原資産(株式指数、商品など)の取引所の取引時間と、CFD自体の取引時間が異なる場合があります。
例えば、日本の株式指数(日経平均株価など)を対象とするCFDは、東京証券取引所の取引時間(前場9:00~11:30、後場12:30~15:30)以外でも、証券会社によってはほぼ24時間取引が可能です。
ここで注意が必要なのは、原資産市場の取引時間外や、週末・祝日などで市場が閉まっている間に、ロスカットラインに達した場合の扱いです。
CFDの価格は、先物市場の動向や証券会社の提示するレートに基づいて変動し続けるため、市場が閉まっていてもロスカットが発動する可能性があります。
特に週末に大きなニュースが出た場合、週明けの月曜日の取引開始時に大きな窓を開けて価格が変動することがよくあります。
金曜日の終値時点では証拠金維持率に余裕があったとしても、月曜朝の開始価格(始値)が大幅に不利な方向に飛んだ結果、取引開始と同時にロスカットが発動し、想定外の大きな損失を被るリスクがあります。
ポジションを週末や祝日をまたいで持ち越す(オーバーウィーク、オーバーホリデー)場合は、通常時以上に証拠金維持率に余裕を持たせるなど、一層慎重なリスク管理が求められます。



週末や夜間も取引できるCFDは便利ですけど、リスクもあるんですね。



はい、市場が閉まっている間の大きなニュースは、週明けの価格にギャップを生じさせることがあります。ポジションを持ち越す場合は、維持率に十分な余裕を持たせることがより重要になります。
5.3 ロスカット手数料の有無(例:外為どっとコム)
ロスカットが執行された際に、一部の証券会社では「ロスカット手数料」が発生する場合があります。
例えば、外為どっとコムでは、ロスカット時に所定の手数料がかかる場合があります(※最新の規定は公式サイトで確認してください)。
多くの証券会社ではロスカット手数料を無料としていますが、有料の会社も存在するため注意が必要です。
ロスカット手数料は、取引による損失に加えて、追加で発生するコストとなります。
金額自体はそれほど大きくないかもしれませんが、ロスカットという望ましくない結果に対して、さらに費用負担が増えることになります。
CFD口座を開設する際には、取引手数料やスプレッドだけでなく、ロスカット手数料の有無や金額についても、事前に確認しておくことをお勧めします。
わずかなコストの違いも、長期的に見れば無視できません。
手数料の存在は、ロスカットを回避するための動機付けの一つにもなるでしょう。



ロスカットされるだけで損なのに、さらに手数料まで取られることがあるんですか?



証券会社によりますが、ありえます。多くは無料ですが、念のため、口座を開設する証券会社のルールを確認しておきましょう。小さなコストも積み重なりますからね。
6. 追加証拠金(追証)について
追証(おいしょう)とは、証拠金維持率が一定水準(多くは100%)を下回った場合に、証拠金の追加預託やポジション決済を求められる制度です。ロスカットの前段階の警告であり、期限内の対応が必要です。証券会社によって発生基準や対応期限が異なります。
6.1 追証の発生条件と対応方法
追加証拠金(ついかしょうこきん)、一般に「追証(おいしょう)」と呼ばれる制度は、ロスカットに至る前の警告段階として機能します。
追証は、口座の証拠金維持率が、証券会社の定める一定の水準(例えば100%など、ロスカットラインよりは高い水準)を下回った場合に発生します。
追証が発生すると、証券会社からトレーダーに対し、指定された期限(例:翌営業日の取引終了時刻までなど)までに、証拠金維持率を回復させるよう要求がなされます。
維持率を回復させるための対応方法は、主に以下の二つです。
- 追加の資金を口座に入金する: 不足している証拠金を補い、有効証拠金を増やして維持率を回復させます。
- 保有しているポジションの一部または全部を決済する: 必要証拠金を減らす、または実現損益を計上して有効証拠金を変動させることで、維持率を回復させます。
指定された期限までに追証を解消できなかった場合、証券会社は強制的にポジションを決済します。
この強制決済は、実質的にロスカットと同じ結果をもたらします。
追証は、ロスカットという最終手段が発動する前に、トレーダーに状況を改善するための猶予期間を与える制度と理解できます。
しかし、追証が発生する状況自体が、すでにリスク管理が不十分であったことを示唆しています。
追証の発生を待つのではなく、常に証拠金維持率に余裕を持たせることが重要です。



追証っていうのは、ロスカットの前の最終警告みたいなものですか?



その通りです。追証が発生したら、すぐに対応が必要です。期限までに入金するかポジションを決済しないと、結局ロスカットになってしまいますから。
6.2 各証券会社の追証ルールの比較
追証が発生する証拠金維持率の基準や、追証を解消するまでの期限は、証券会社によって異なります。
多くの証券会社では、証拠金維持率100%未満を追証の発生基準としていますが、これと異なる基準を設定している会社もあります。
また、追証の解消期限も、「翌営業日の〇時まで」「翌々営業日の〇時まで」など、各社で規定が異なります。
さらに注意すべき点として、一部の証券会社では、追証の制度自体がなく、証拠金維持率がロスカットラインに達した時点で即座にロスカットが執行される場合があります。
例えば、DMM CFDのように維持率100%未満で追証なしに即ロスカットとなるルールや、楽天証券のように維持率70%未満で追証が発生し、50%以下でロスカットとなるルールなど、様々です(※最新情報は要確認)。
先ほど(2.2節)の比較表にも記載しましたが、ご自身が利用する証券会社の追証発生基準、解消期限、そしてロスカット基準を正確に把握しておくことが不可欠です。
追証制度の有無やルールは、証拠金維持率が低下した際の対応時間や緊急度に直接影響します。
追証制度がある場合は、警告を受けてから対応する時間がありますが、追証なしで直接ロスカットされるルールの場合は、より一層、事前のリスク管理と維持率の監視が重要になります。



追証のルールも証券会社で違うんですね。なんだか複雑…。



はい、細かいルールは異なりますね。重要なのは、自分が使う証券会社の『追証発生ライン』と『ロスカットライン』の両方を正確に把握しておくことです。そうすれば慌てずに対処できます。」
7. ロスカットとリスク管理の重要性
ロスカットは最終的な安全装置ですが、それに頼るべきではありません。相場急変時のスリッページリスクなど限界があるため、トレーダー自身の主体的なリスク管理、特に自己資金管理と損切りルールの徹底が不可欠です。
7.1 ロスカット制度の限界とリスク
これまで見てきたように、ロスカット制度は投資家保護のための重要な仕組みですが、決して万能ではなく、いくつかの限界とリスクを内包しています。
- スリッページ・ギャップリスク: 相場の急変動時には、ロスカット注文が想定より不利な価格で約定し、預けた証拠金以上の損失が発生する可能性がゼロではありません。
- 強制決済による不利益: ロスカットはトレーダーの意思とは関係なく、全ての(または一部の)ポジションを強制的に決済します。これにより、将来的に利益が見込めたかもしれないポジションや、含み益のあるポジションまで失う可能性があります。
- 戦略としての不適切さ: ロスカットラインを損切りラインとして利用する、つまりロスカットされるまでポジションを持ち続けるという考え方は、非常に危険です。これは、強制決済されるまで最大級の損失を受け入れることを意味し、計画的なリスク管理とはいえません。
ロスカットは、あくまで「最後の砦」であり、積極的に頼るべきものではありません。
ロスカット水準に近い証拠金維持率で取引を続けること自体が、高いリスクを伴う行為です。
真のリスク管理とは、ロスカット制度に頼るのではなく、自分自身で損失をコントロールすることです。
具体的には、取引を始める前に、許容できる損失額を決め、その水準に達したら自らの意思で損切り(ストップロス)を実行することが基本となります。
ロスカット制度があるから大丈夫、という安易な考えは、過剰なレバレッジや不十分な資金での取引を助長しかねません。
ロスカット制度の限界を正しく認識し、それを最後のセーフティネットとしつつも、その手前でしっかりとリスクを管理する意識を持つことが重要です。



ロスカットがあるから大丈夫、って思っちゃいけないんですね。



その通りです。ロスカットは最終防衛ラインであって、頼るべきものではありません。自分で損切りラインを決めて、それよりずっと手前でリスクをコントロールするのがトレーダーの基本です。
7.2 自己資金管理の徹底とリスクヘッジの方法
CFD取引でロスカットを避け、安定的に資産を運用するためには、徹底した自己資金管理とリスク管理の実践が欠かせません。
- 資金管理 (Capital Management):
- 余裕資金での取引: 生活費や将来必要となる資金ではなく、失っても生活に支障のない余裕資金の範囲内で取引してください。
- レバレッジの抑制: 最大レバレッジいっぱいまで使うのではなく、低いレバレッジ(例えば実効レバレッジで3~5倍程度など)に抑えて取引することを心がけましょう。
- 高い証拠金維持率の維持: ロスカットラインや追証発生ラインを常に大きく上回る水準(例えば最低でも200%~300%以上)を維持するように努めます。
- 適切なポジションサイズ: 1回の取引で許容できる損失額を、総資金の1%~2%程度に抑えるなど、自身の資金額とリスク許容度に基づいたポジションサイズを計算し、それを守ります。
- 損切り (Stop-Loss):
- 事前の損切り設定: 新規にポジションを建てる際には、必ず自分自身で損切りライン(ストップロス注文)を設定します。損切りラインは、テクニカル分析や自身の戦略に基づいて決定し、感情に左右されずに実行するルールを確立しましょう。損切りラインは、証券会社のロスカットラインよりもはるかに手前の水準に設定するのが基本です。
- リスクヘッジ (Risk Hedge):
- (上級者向け)保有しているポジションのリスクを相殺するために、相関関係のある別の金融商品で反対のポジションを建てるなどのヘッジ戦略も存在します。例えば、買いポジションのリスクを軽減するために、関連する別の資産の売りポジションを持つなどです。ただし、ヘッジ取引は複雑であり、コストもかかるため、初心者はまず上記の資金管理と損切りの徹底に集中するべきでしょう。
CFD取引で成功するためには、相場の方向性を予測する能力以上に、いかにリスクを管理し、損失をコントロールできるかが重要です。
「どれだけ儲けられるか」だけでなく、「この取引で最大いくらまでなら損しても大丈夫か」を常に考え、守りを固める意識を持つことが、長期的に市場で生き残るための鍵となります。



なるほど… 利益を追うだけじゃなくて、まずリスクを管理することが大事なんですね。



まさにその通りです! 徹底した自己資金管理と損切りルールの実践が、CFD取引で長く生き残る秘訣です。焦らず、守りを固めることから始めましょう。
8. まとめ:ロスカット制度の理解と適切な対応
CFD取引におけるロスカットは、損失拡大を防ぐ重要な制度ですが、その仕組みや証券会社ごとの違いを正確に理解することが不可欠です。ロスカットを回避し、安全に取引するためには、余裕を持った資金管理と計画的なポジション管理を実践することが最も重要です。
8.1 ロスカット制度の理解の重要性
この記事では、CFD取引におけるロスカットについて、その基本的な仕組み、導入されている理由、証拠金維持率との関係、そして具体的な回避策まで解説してきました。
ロスカットは、レバレッジ取引に伴うリスクから投資家を守るための重要なセーフティネットです。
しかし、それは最後の手段であり、相場急変時には限界があることもご理解いただけたと思います。
最も重要な点は、ご自身が利用する証券会社のロスカットルール(発動する証拠金維持率、ロスカットの対象範囲など)を正確に把握しておくことです。
ルールを知らないまま取引を行うことは、予期せぬ強制決済を招く大きなリスクとなります。
口座を開設する前、そして取引を開始する前に、必ず契約締結前交付書面やウェブサイトで詳細を確認してください。



今日の説明で、ロスカットの仕組みと、証券会社ごとの違いがよくわかりました。



よかったです。この知識があるかないかで、リスクへの備えが大きく変わります。必ず、ご自身が使う(または検討中の)証券会社のルールを再確認してくださいね。
8.2 適切な資金管理とポジション管理の実践
ロスカット制度について理解を深めた上で、次に実践すべきことは、ロスカットに頼らない、主体的なリスク管理です。
ロスカットを回避し、CFD取引で安定した成果を目指すためには、以下の点を常に心がけてください。
- 常に証拠金維持率に余裕を持つ: 追証やロスカットの基準値を大幅に上回る水準を維持します。
- レバレッジをかけすぎない: 低い実効レバレッジで取引を行います。
- 自分自身の損切りルールを設定し、厳守する: ロスカットラインよりも手前で、計画的に損失を限定します。
- 余裕資金の範囲内で、適切なポジションサイズで取引する: 1回の取引での損失許容額を明確にします。
CFD取引は、レバレッジにより大きなリターンを期待できる反面、相応のリスクも伴います。
しかし、ロスカットの仕組みを正しく理解し、規律ある資金管理とポジション管理を徹底すれば、リスクをコントロールし、長期的に市場と向き合うことが可能です。
ご自身の投資目標やリスク許容度に合った証券会社を選び、まずは少額から、慎重に取引経験を積んでいくことをお勧めします。



これからは、証拠金維持率をしっかり見て、無理のない範囲で取引します!



素晴らしい心構えです! 焦らず、ルールを守って、着実に経験を積んでいくことが成功への近道です。応援しています!



最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
【登場人物】






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